ポエム

椅子と風船と女の人

カルチャアセンターに
絵を習いにいったら、いきなり裸婦の日で
困った。

デッサンもしないで
はだかの、若いモデルさんを
ずうっと見ていたら
ある時、
視線があった。

20分間ポーズして、15分間休憩するモデルさん。

皆は、20分間のポーズの間に描きつづけるが、
BOKUは、見つづけ、
彼女のいない椅子だけの風景の15分間に
彼女を描いた。

長い15分間が過ぎると、
彼女はどこからともなくあらわれて、
さっと、
一枚の着物を脱いで
又、あらわになった。
最後の短い20分間の間、
BOKUは息も殺して、
彼女を、
穴があくように見つづけた。

彼女は帰りぎわに BOKUの20号のキャンバスをのぞいて

そっと、
どうして緑色、と
たずねた。

すいません、と
答えると、
いいんです、と
返ってきた。

BOKUは、
かならず美しい人に仕上げてみせます
と、言いたかったけれど、
言えないで、
こころに、ちかった。

彼女は大きな黒いかばんを肩にかかえるようにかついで、
アトリエを
静かに、去った。

以来、彼女は姿を見せず、
BOKUも、
日曜だけのその絵画教室を
まもなくやめた。

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