エッセイ

二宮町指定ごみ袋45L

この日はやっぱり忘れられない日になりました。僕達が仮住まいの東京のつつじヶ丘のマンションから二宮町に越してきた記念日だからです。
二宮町の百合ヶ丘に決めた理由は海に近く、遠望できる 100 坪弱の更地だったからです。詩人は3畳一間とリンゴ箱があれば生業は成り立ちますが、なん せ僕は画家なんでそこそこのスペースがいります。生活空間はちょっとでいい んですがアトリエが狭いと仕事にならないわけです。

引っ越した日に両お隣さんとお向かいさんに御挨拶にいきました。みなさん すでに人生を豊かに過ごしてきた人ばかりでした。お腹がすでに目立ち始めたかずさんを見て
「あらら、赤ん坊ができるの?」
「予定日は12月なんです。なんにもわかりませんのでよろしくお願いします」
「いいとこよ二宮は・・・」

というわけでお隣の谷山さんから二宮町指定の45L のゴミ袋を引っ越し祝 いに頂いたのを昨日のことのように覚えています。

「サカガミサン、二宮は指定のごみ袋なんだね。これってどこに売ってるん・・・」 かずさんは当時僕のことをのぶさんと呼ばずにサカガミサンでした。